このページはリニューアル前(2023年6月時点)に公開していた旧デザインのページです。
このページに掲載されている情報は過去のものであり、最新のものとは異なる場合がありますのでご注意下さい。
リニューアル後のホームページはこちら

ホーム > JMM , R&D > 記事紹介:臨床試験の立案・実施

記事紹介:臨床試験の立案・実施

 

製薬医学に生きる医師 All About Pharmaceutical Medicine 第5回目がJapan Medicine MONTHLY 2010年12月号に、三好先生の執筆による「臨床試験の立案・実施」が掲載されましたのでご紹介いたします。

 

AAPM05.jpg

====================================================

製薬医学に生きる医師

 ALL About Pharmaceutical Medicine 連載 第5回

 

『臨床試験の立案・実施』

三好 出(フアイザー株式会社クリニカル・リサーチ統括部神経疾患領域部)

 臨床開発における臨床医の役割を考えるにあたり、私の臨床開発へのかかわりを提示し、グローバル化された開発における企業で働く日本の臨床医の役割を考えてみます。

1.私の臨床開発へのかかわり

 私は現在、アルツハイマー病に対する抗体薬の開発にかかわつており、日本臨床開発チームのリーダーであると同時にグローバル臨床開発チームに加わっています。グローバルチームに「地域枠」で加わっているのは日本からのみで、他のメンバーはすべて臨床、薬事、毒性、プロジェクトマネジメントなど機能別に選ばれています。
 日本に特殊な地位が与えられているのは日本からのコミットメントの歴史に加えて、日本のマーケットの大きさ、規制。言語上の壁のためです。したがつて、日本から地域枠で加わっている医師には日本の医療・規制の現状をタイムリーにインプットしていくことが求められており、これらの知識が必要です。ちなみに、このグローバルチームには米国、南アフリカ、台湾、イスラエル出身の医師が在籍し、中国、オーストラリア出身の医師も必要に応じて加わります。他の職種と比較しても医師の出身国の多様性は目を引きます。

2.臨床開発において医師に求められるもの

 臨床開発において医師に求められるものは、医療における各専門職の関係や学会の知識、臨床と研究のバランスを総合的に判断する医療の知識、安全性の評価、プロトコール立案時の実施可能性の評価、学会・医療施設の医師とのインターフェイスなど多岐にわたります。米国に拠点を置くファイザーのグローバルチームの医師たちを見ていると、安全性などある特定領域のスペシャリストとして活躍する医師と、開発チームのリーダーを務める医師に大別できるようですが、医療現場でもそうであるように、医師はチームのリーダーを務めるよう求められる場合が多いようです。いずれの役割においても最も重要な資質はリーダーシップと学習能力の高さであるように感じます。
 リーダーシップは医師にとってなじみのあるものです。他科の医師・看護師・薬剤師など多職種のチームを治療に向けて良好に機能させる、病院幹部・看護部などと良好な関係を持ちながら病棟を切り盛りするといったことと臨床開発チームをリードするのは本質的には変わりません。しかし、学習能力に関しては専門でない領域を短期間で理解する能力が必要です。実際、私が属するグローバルチームは大規模な検証試験を実施するにあたり大きなメンバーの交代がありました。その際、別の疾′ま領域からチームリーダーが指名されましたが、非常に短い時間で膨大な臨床試験情報と背景にある疾患と研究の最先端までの情報に追いついたことがとても印象に残っています。

 また、昨今のグローバル化を考えると、英語だけではなく異文化コミュニケーションをこなす能力が求められていることも感じます。私は海外経験がないのでとにかくコミュニケーションの量を多くとることを心がけていますが、週に数回の電話会議や海外出張など「時差」を克服することもグローバル化によって必要とされるようになった能力です。グローバル化といっても所詮は人間同士がやることで、頻繁に電話をして声を聞き、時々会っているということは厳しい状況になったときに有効に機能するチームを作るために非常に強力な武器になります。

 このように、自らの臨床経験・知識を大事にするだけではなく、治療チームのリーダーとして働いた経験を持つ臨床医が息者の治療を志しながら臨床開発チームをリードするということそのものが、非常に重要な臨床開発に対する臨床医のインプットであると私は考えます。

 



メーリングリストバナー