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記事紹介:新薬が承認されるまでの道のりとPMDA
製薬医学に生きる医師 All About Pharmaceutical Medicine 第6回目がJapan Medicine MONTHLY 2011年1月号に、平田雅一先生の執筆による「新薬が承認されるまでの道のりとPMDA」が掲載されましたのでご紹介いたします。
製薬医学に生きる医師
ALL About Pharmaceutical Medicine 連載 第6回
『新薬が承認されるまでの道のりとPMDA』
平田雅一 (医薬品医療機器総合機構(PMDA)新薬審査第一部)
PMDAの新薬審査部門では、疾病領域ごとに審査チームが組織され、品質、薬理、毒性、薬物動態、統計の各担当者および臨床医がチームを構成します1)。各チームは、治験などの新薬開発に関する相談(対面助言)、承認申請資料の評価、製造販売後調査結果の評価などを行い、承認申請の評価結果を審査報告書にまとめます。
新薬の開発とPMDA
対面助言では、承認を得るのに必要な情報をどのように収集し、申請資料を構成するか、製剤の品質、非臨床での安全性および治験計画などに関して相談者と議論し、コンセンサスを構築します。新薬開発では最初の相談から承認申請までに数年かかるので、先を見通した議論ができるよう、最新の科学的知見と臨床医学の動向を注視しています。また、医師主導治験2)の相談も行います。
承認に必要な臨床情報の収集=臨床開発
典型的な臨床開発は、薬物動態や忍容性を検討する第I相試験、効果と用量反応性を検討する第Ⅱ相試験、多くの症例に投与した際の有効性と安全性を確認する検証的な第Ⅲ相試験の順に実施されます。
承認申請時の資料には、添付文書に記載される「効能・効果」と「用法・用量」を決定するのに十分な根拠となるデータが含まれている必要があります。
用量を検討する試験での有効性の評価指標は、検証試験と同じとは限りません。長期予後の改善を期待した薬なら、後期第IIオロ試験では有効性の代替指標(surrogate endpdnt)を用います。代替指標のみを基準に薬の開発が行われると、指標に無関係な薬物の効果が、最終的なエンドポイントや息者さんの健康に影響する場合もあるはずです。そんな予期せぬ結果を避けるべく、非臨床成績、薬理学的な作用機序や薬物動態など、さまざまな視点から、試験成績を精査するよう努めています。
希少疾病から個別医療へ
一方、希少疾病や、重篤でほかに有効な治療が存在しない場合は、代替指標の成績に基づく承認が必要な場合もあり、真のエンドポイントと考えられる生存率などは、第Ⅳ相試験など、製造販売後の検討での評価になります。また、承認の前後にかかわらず、症例報告や臨床研究の論文に記載された情報は貴重で、症例報告や臨床研究では、有効・無効に限定せず、安全性に関する記載が望まれます。
今後、個別医療と称される、病因・病態により特異的な診断・治療が発展すると、個々の治療薬の対象症例数は少なくなり、承認前の情報が不十分になると予想されます。有効性や安全性の情報をどのようにして補完するかが、将来の課題となると考えられます。
参考サイト、文献など
1)http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline.html
PMDAホームページ:承認審査業務
2)http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/chiken/index.html
厚生労働省「治験」ホームページ